読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

『怪しい彼女』(ファン・ドンヒョク) ★★★★★

2014年新作 movie

 f:id:otsurourevue:20140926003518j:plain
2014/9/1@シネマパレット

 ファン・ドンヒョク監督の前作は『トガニ』というずっしりとした社会派ドラマだったこともあり、序盤の老人を巡る問題が描かれた時には少し警戒した。しかし、ある女優の登場をきっかけに、この映画は一気にコメディ方面に舵をとる。
 その女優とはシム・ウンギョン。彼女は『サニー 永遠の仲間たち』でイム・ナミを演じたときにも憑依演技として祖母の毒舌を捲し立てるシーンがあった。だから、ある意味この映画への出演は非常に危険だったはず。タイプキャスティングととられかねないのだから。だが、彼女には奇策がある。シム・ウンギョンはこの映画でオ・ドゥリを演じる際に、明確にイム・ナミとは変えている。それは顔に苦労が滲んでいるか否かという部分で、具体的には頬を完全に上げきっていない笑いかたをしている。ナミや若き日のマルスンを演じた時の笑いかたをとは違う。この映画は彼女が登場した時点でシム・ウンギョンに支配されている。気付いたのだが、彼女は映画においてはほとんど現代人を演じない。そして今回も『サニー』と同じように、失われた過去を取り戻す役割を演じる。これは『あまちゃん』の有村架純に近い。途中、オードリー・ヘプバーンの写真が出てくるけど、彼女の演技は同じヘプバーンでもむしろキャサリン・ヘプバーンを連想させた。この映画はまさにスクリューボールコメディの影響も感じられ、そこもポイント高かった。この土台にシム・ウンギョンが掛け合わされて、笑いも涙もかなり増幅されていた。
 惜しむらくは、勢いを重視しすぎたせいかところどころ脚本にほころびが見られるところか。終盤、彼女の息子にあたる人物がドゥリを引き留めるときには感動したはしたけれども「それじゃ息子はどうなる?」と疑問に思ったのも事実。ただし、この映画には勢いが必要だったのでやむを得ない。
 この映画を見たあと、自分のおじいやおばあにも歴史があることや、若いということや現代に生きているということがいかに素晴らしいかということ、すなわち、今立っている地点の再確認が出来るという点をもっても、とてもいい映画だと思います。