OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

岡崎京子「Pink」

 岡崎京子が1989年にヤングザウルスという雑誌で連載していた漫画。
 僕が初めて読んだ岡崎京子の漫画がこれで、高1の6月くらいだった。たしか、当時僕は岡崎京子のことをレディースコミックの人だと思っていたんだよね。それだって間違ってはいないだろうけど、岡崎作品のそれらとの決定的な違いは恋愛に対する距離の置き方だと思う。岡崎作品は、どこか恋愛に対して醒めてる。なかにはストーカーレベルまで恋愛しているキャラもいる。それだって、レディースコミックのキャラのレベルを逸している。で、僕が本当に愛を描いているのは岡崎京子だと思う。
 この作品は、ホテトル嬢をしていてワニを飼っているユミコは義理の母親とは不仲で、でも義理の妹とは仲良しで、その義理の母親のツバメをしている小説家志望のハルヲくんと知り合って、って言う話。週刊連載のせいか、絵は荒れている気はするけど、それを払拭するだけの魅力がありました。
 描かれた時機を見るとバブルの真っ只中で、文化的に言えば仮面ノリダーに代表されるようにサンプリング中心。僕にはおぼろげにしか記憶は無いけどノリダーとおぼっちゃまくんだけは覚えているんだ。で、この作品にはよくブランドが出てくるし、それはユミコの欲望の対象だ。で、僕にはユミコは確かに前母の自殺というのを経験してはいるけど、多分東京においてはそんなに目立った生い立ちの人ではないと思う。この作品中一回もユミコの父親は出てこないが、多分大金持ちだ。で、ユミコはそういった恵まれた家庭で育ったお嬢様で、娼婦だ。
「なんだかすごく悲しくなってそんなにお金欲しければカラダ売ればいいのにと思った」
岡崎京子「Pink」P.154)
 そんなありふれた女の子が欲望をかなえるためにカラダを売って、ワニと物欲を心の支えにして、それは異常に見えるかもしれないけど実はすごく正常なことなのかもしれない。
 あとがきを読んでほしい。僕は一回働いて、挫折している。時間と労働力を与えて賃金をもらうことに失敗している。資本主義という名のプールで溺れて以来水を恐れる子供のようになっている。でも、あの岸の向こうまで泳いでいけば楽しいことが待っているかもしれないとしたら?

pink (MAG COMICS)

pink (MAG COMICS)