石田衣良「骨音 池袋ウエストゲートパーク?」
IWGP三作目。
ふと思ったのだけれども、石田衣良さんは1960年生まれ。おそらくは全共闘を子供の頃に見た世代。IWGPは若者のリアルを描いた小説だと思われがちだし、実際にそうだと思うけれども、IWGPを書き始めたときにはすでに37歳で、若いとはいえない年齢。ただ、この前テレビ出演しているのを見たら、とても46歳とは思えないくらい若く見えたのを覚えている。
多くの小説家がそうであるように、石田衣良もおそらくはマコトに自己投影をしている。石田衣良は大学を卒業しているし、小説家特有のインテリジェンスもおそらくはあるのだと思う。
マコトは不良グループと絡みながら高校卒業後しばらくプーをしつつ実家の青果店を手伝う。ファッションセンスは乏しくクラシックを愛聴し、本も読むという具合に時代からずれたところを持ちつつも、援助交際、ドラッグ、最先端のアクセサリー、レイヴムーヴメント、引きこもりといった現代における文化が絡んだ事件を解決していく。マコトは基本的にどのグループにも属さない性格をしていて、けど男子受けするのはその人徳によるところが大きいのだろう。魅力的なキャラだと思う。
しかし、マコトはチーマー文化とインテリを併せ持った点で、どことなくちぐはぐな印象を受けるもの事実。だいたいの不良系のひとびとはクラシックを解さない。
話は変わる。僕の話。友達少ない僕だがそれでも所属する共同体(卒業した高校、サークル。研究室など)にはそれなりに心許せる友達ってのがいて、ある日ふと思うのはそんな友達が僕という接点で集まったら楽しいんじゃないかなということだ。そんなの、結婚式か葬式でしかないだろう。
思うに、石田衣良さんにとってIWGPというのはそういった場ではないだろうか。ルナールもクラシックも若者文化も好きだからこそ、それらが一同に会する場を作りたい、そんな夢想が生み出したキャラ、すなわち、それらの介在点がマコトじゃないだろうかということ。そして、「西口ミッドサマー狂乱」にて描かれる池袋ウエストゲートパークでのレイヴパーティーがそのひとつの到達点ではないかということだ。ちょっと長めで、オチもIWGPの本流からは外れるけれど、IWGPを読んできてこの作品に出逢ったときの感動は格別だ。キャラも魅力的(特にトワコ)だし。
それと、この第3集は音に着目した話が多いような気がした。
73/100
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/09/03
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