OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

悪人(★★★★★)


 間違いなく物議を醸し出す問題作になるだろう。

 もう一つの問題作『告白』('10)と同じく、こちらも原作をほぼ忠実に映像化している。
 ただし手法は真逆。『告白』が原作の一部分を拡大解釈しているのに対し、こちらでは原作の説明過多な部分を削ぎ落している。 そして、この作品の主題ともいえるセリフすらカットしている。
 僕は前に原作を読んだ時に、twitterに「様々な解釈があるようで、一通りの解釈しか許していない作品」と書いたのだけれど、映画化にあたり行った省略により、様々な解釈ができる作品になったと感じた。

 この映画を観て感じたこと。
 社会から疎外された者同士がわかりあうというモチーフは古今東西よくみられる。
 彼らは作者の孤独を投影したものであるが、多くの観客に疎外感をわかりやすく伝えるという使命があるため、そのモチーフは身分の違いだの家族の反対だのといった紋切り型に落ちやすい。
 けれど、実際にそれを伝えるにはこの一言で十分だ。
 それは、「モテない」ということ。
「モテない」というのは異性からにとどまらない。社会から認められず現状に満足できずに愛されることに飢えている者は「モテない」。
 対して、「モテる」者=愛情を享受しすぎて愛情にマヒしてしまった者として岡田将生が配置されている。
 この映画に出てくる「出会い系サイト」というものが安っぽいと感じる人も多いと思うが、それは社会から疎外された(=「モテない」)者が社会に対してどうにかつながろうとする上で、最後に残されたツールだった。
 だから、この映画の登場人物が社会とつながろうとしてなかなかうまくつながれず終いには過ちを犯してしまい、ようやくつながれたと思ったらもう取り返しのつかないことになっていたという状況がすごく悲しいものに感じた。
 けれども、取り返しのつかない二人の逃避行だけは、すごく幸せそうに感じたのも事実。

 ちなみに、原作の主題ともいえるセリフであり、映画ではカットされたセリフは以下。




「どっちも被害者にはなれんたい。」

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