美しい星/三島由紀夫(新潮社)
三島由紀夫は全部読んだことは無いのですが、この作家の特徴として挙げられるのは、「美への執着(これは妄執といってもいいと思います)」
それと、特殊な感情を持った者の持つ離人感ですね。
三島由紀夫はそれらの説得性を出すために、これ以上ないほどの荘厳な文体を用いています。
これだけ美麗な表現を用いて書いているということに、一種のバカバカしささえ感じますよ。
さらにですよ。この小説はですね、まず一本の小説としてものすごく面白いんですよ!
たとえて言うなら江戸川乱歩の少年探偵団シリーズみたいですね。
興味の惹き方、この物語でいうと、円盤は果たして本当に存在するのか、とか、そもそも円盤の意味するものは何なのか、とか、そういった要素で興味を引くのがうまいんです!
それに加えて、青年期に持ちがちな全能感も加わっているのかなと思いました。
山本弘『神は沈黙せず』とか、漫画の『寄生獣』とか思い出した。
あと、終盤の論戦は連合赤軍の内ゲバを見ているようだった。
終盤の論戦を見てて思いだしたのは、正義の思想と悪の思想とでは、明らかに悪の思想のほうが強いですね、ということ。
ただ、俺が『ダークナイト』の安易なジョーカー崇拝が気に喰わないのは、それでも正義の思想を支持したいという気持ちがあるからで、正直に言ってこれは理屈ではありません。
三島由紀夫はそれに対して、どうにか理屈をつけようと躍起になっているのがわかります。
だからこそ、全能感を打ち砕くのが別の全能感(しかも主人公たちが持っているものよりもいささか俗なやつ)っていうのは、ちょっとどうかなと思いました。
終盤の展開は感動的といってもいいでしょう。
ただ、やはり序盤であれだけワクワクさせてくれただけに、ちょっと着地点としては物足りないかな・・・というのは残りますね。
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/09
- メディア: 文庫
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