リトル・ミス・サンシャイン('06/ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファレス)
とりあえず、2012年はあまりプライベートでいいことがなかったということで、締めにこの映画を見たんですよ。実はそれまで見たことがなかったんですけれども。
そして、見終わって、自分の直感が恐ろしくなりましたね。これ以上一年の締めくくりに相応しく、また新たなる年の始まりにフィットする映画があるだろうかと。
そんなわけでぼくはこの映画の大ファンになりました。今では「好きな映画は『リトル・ミス・サンシャイン』です」とドヤ顔で言えます。ここから先はうまく書ける自信がまったくないですがつれづれと書かせていただきます。
この映画はある機能不全に陥った一家のお話で、《自己啓発セミナーで大もうけを考えている》父、《離散しそうな一家をまとめようとする》母、《ニーチェかぶれで空軍パイロットを目指す》兄、《ミスコンに憧れるぽっちゃり少女》妹、《ヘロイン中毒で女好き》おじいちゃん、これに《ゲイでうつ病のプルースト学者》の叔父が加わります。
この一家が、末っ娘のオリーヴをカリフォルニアのミスコンに出場させるためにVVバスに乗って旅をしていく中で、彼らの葛藤をいかに乗り越えていくか、というのがお話の推進力となります。
それで、よくもまあこれだけ次から次へと問題が噴出するもんだと笑いながらもあきれ気分になり、本当にこれらの問題が片付くのという気分になります。
ただ、ここまで笑いを積み重ねてきているからこそ、緊張がほぐれてきていて、終盤のある展開で心おきなく泣けるんですよね。
さて、ここまでバラバラの家族が、どうにか一丸となれたのはなぜか?
この一家の旅自体が、人生の縮図に見えることもある。人生の先輩から教えを引き継ぎ、後世にそれを託すこと。自分勝手な一家がなぜオリーブのためにあれだけ労力を使えたかというと、オリーブちゃん自身が彼らの未来であり、希望の象徴だからです。
※以下ネタバレ含む
苦難の道の中で、おそらくカンのいい方なら、乗り越えられるべき障壁が何かは察しがつくと思います。
父のフランクが度々口にする「勝ち組/負け組」志向。これに、おそらく多くの観客は「いや、それはないんじゃ」と考えるでしょう。
ただ、一方で私たちの生きている世界がこの「勝ち組/負け組」志向にとらわれているのも事実です。それを象徴的に現わしているのがミスコンテストです。
あまりのレベルの高さにおののいた父や兄は出場を止めようとします。しかし、オリーヴちゃんは自ら出場を決めます。
そして、オリーヴちゃんのステージ。あそこは不謹慎ながらも笑えると同時に、非常に胸のすく思いがするのでは?オリーヴちゃんはわかっていたんだ!というよりも、おじいちゃんはすべてお見通しだったんだ!「勝ち組/負け組」志向に対する、ささやかな反乱。ぼくはここで号泣しました。
結果的に、この旅を通して一家を取り巻く状況は何一つ好転していません。むしろ悪くなったかもしれない。
でも、最後にバスを押す姿を見ていると、彼らなら大丈夫、きっとなんとかやっていけるさ、という気分にさせられる。
おそらく、これから先何回も観返すでしょう。
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