OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

BLANKEY JET CITY「BANG!」(1992)

 日本最強のロックンロールバンド・ブランキー・ジェット・シティー(以下ブランキー)が1992年にリリースしたセカンドアルバム。個人的には、最高傑作だと思う。ナイフみたいにヒリヒリする感触のアルバム。空気をズタズタに切り裂くギター、凶暴なドラム、そいつらを取り巻く、存在感はあるけどなんか邪悪な空気みたいなベース、そして、すべての青臭い悲しみを背負って世界に爆弾として投下するようなベンジーの濁声、すべてが最高のところで結実したアルバムだ。ブランキーは10年もの間、最後まで水平飛行に移らずに上昇しつづけたロックバンドだ。だから、質感的にはこれ以上のアルバムはやっぱりある。ブランキーの音は流行とかそういったものでは変わらないけど、メンバーのそのときの心境とかを投影しやすい音ではあるから、そもそもどれがNo.1とか決めにくい。エレカシがエピック時代とポニー時代とEMI時代では、どこが変わったとかうまく説明できないけど確かに変わってて、それゆえにどれがベストとか決められないように。
 じゃあ、何でこのアルバムが一番好きかって、それは、俺がブランキーに求めているものがすべて詰まったアルバムだから。こんだけ凶暴な音が出せるバンドはブランキーしかいなくなった。それは、音量とか速度とかじゃなくて、もっと観念的な、精神的な意味で。「SOON CRAZY」のジャズチックな伴奏もベンジーの、曲の主人公の不安定な精神状態を表しているように聞こえる。そんな曲が11曲。そして、最後の「小麦色の斜面」だけ、ポジティブな印象。この構成は「幸せの鐘が鳴り響き、僕はただ悲しいふりをする」(1994年発表)なんかにも受け継がれている。初期ブランキーの魅力っていうのは繊細さと不良性だった。それで、繊細さをより前面に出し始めたのはこのアルバムからだ。繊細さと不良性のバランス的にいえば「C.B.Jim」(1993年発表)が一番いいし、僕もこのアルバムを最高傑作とする説に頷けないわけじゃない。
 けど、ガチの不良なのに繊細さを併せ持ったベンジーが好きなんだよ。で、ストレイキャッツ直径のロックンロールもポージングじゃ決して無いし、それで、このアルバム中の繊細さは、不良性という捕色のおかげで、より色濃く見えるといったところなのかな。少なくとも、このアルバムにしか「絶望という名の地下鉄」も「ディズニーランドへ」も入らなかっただろうな。
 そして、このアルバムの中の気温の低さも好きだ―このアルバムはきっと冬のアルバムだと思う。それで、雪は降っていなくて、曇り空で、30年代のシカゴブルースを聴いたときのような、ひやっとした触感を持っているんだ。

BANG!

BANG!