村上春樹「ノルウェイの森」
「世界の中心で、愛をさけぶ」に抜かれるまでは日本の小説で発行部数No.1だった作品。
だけど、これって本当に238万人が読むような作品だろうか。いや、否定しているわけじゃなくてね。椎名林檎の「勝訴ストリップ」とかもそうだけど、思いっきり作者性を出しているにも関わらずヒットするというのは、創作者にとって喜びなのだろうか、それとも悲しみ?
だってさあ、まずこの作品主人公セックスしまくりじゃん。「世界の〜」ではそういった描写一切なかったけどね。だけど、この作品の中のセックスって、全然気持ちよさそうに思えないのだよね。むしろ「僕」が直子の手や口によって射精に導かれるまでが気持ちよさそうに思えるというか、なんだろ、この違い。
そして、この作品の登場人物はどこかイカレテイル。だけど、それは誠実さゆえの、って感じがしてくる。主人公につきまとう後輩の女の子・緑がかつて入っていたフォークソング部に関して悪態をつく場面が好きだなあ。なぜかというと、イカレテイルのはこの世界がおかしいからで、むしろマトモにやっていけている奴らのほうがイカレテイルんだという作者の主張が見て取れるからだ。
これはおそらく60年代の学生紛争が盛んだった時期により良く傾向が出たもので、いまでも世界はおかしいけど、それで狂っている人たちとの境界もよくわからなくなってきた。おそらくは、これがヒットした80年代というのはその過渡期。恋愛やセックスというこの上なくパーソナルな出来事が日本で最も部数の多い女性雑誌のひとつで大々的に特集が組まれるようになった時代。
どうでもいいが、緑ってもしかするとレイコさん*1の人生を狂わしたレズビアンの少女と同一人物だと思ったけれど、違った。そりゃ、そんなドラマチックなこと用意しないよね。この人は。
- 作者: 村上春樹
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*1:主人公の幼馴染で、この小説のヒロインとも言える直子が精神のバランスを崩して施設に言った際にその中でできた友人の女性