『パズル』(内藤瑛亮) ★★★★★
レンタルDVDにて鑑賞。
これ以上ない不快なお話を、これ以上ない適切な演出で描く85分。インディーズ出身監督ということもあり、メジャーで撮ると作家自身の力が失われるのかと思いきや、むしろメジャーなものを壊す力が際立った。問題作かつ傑作。
映画感想を呟くからには、ある程度他者と映画の内容について分かち合いたい、できればお勧めしたいという気持ちがわいてくるものだけれど、これは正直、僕は素晴らしいと思うが、あまり見てほしくない。そんな気持ちにさせられること、めったにない。
映画の演出というものは恐ろしいもので、どんなに屑であってもうまい人にかかれば感情移入させられる。おそらく、この映画に拒否反応を示している人が多いのもそれによるところが大きいのだろう。ただ、それだけでは説明つかない何かがある。
内容は頭からケツまで倫理観に反するものしかない。けれども、その倫理観を越境する行為を映すとき、とんでもなくかっこいい撮り方をする。で、最初は頭の中で切り離そうとするわけ。でも、最後の屋上シーン。明らかに感情移入してはいけない人物に肩入れしてしまう。
この感覚、僕はロブ・ゾンビ監督の『デビルズ・リジェクト』に近いと思った。で、ひょっとすると自分の後ろ暗い欲望、『ヘザース』的に世界を滅茶苦茶にしたいとかいう欲望に共鳴する部分があったのかもと思う。
そもそも、この映画自体、イノセントな人物が転落し、悪に染まっていく過程を描く。それを見せられて観客も毒気にあてられる。「もう観る前には戻れない」と思ってしまった映画は久しぶりだった。まだ映画にこんな気持ちにさせられるとはね。
最初に「あまり観てほしくない」と言ったのも、自分の意識していない毒を言い当てられた気分になったからなのだろう。これ見た人、乙郎が褒めていたからって、乙郎がサイコパス的な人物とは思わないでほしいなと思う次第。ひとつだけ確かなのは、あまり高校時代が恵まれていたほうではないので、映画の中で滅茶苦茶にしたいという欲望は確かにあること。『キャリー』がオールタイムベスト級に好きなのもそういった理由だし、『桐島、部活やめるってよ』の屋上シーンで泣いたのも。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2014/08/05
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