OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

貴志祐介「青の炎」

 貴志祐介作の倒叙モノミステリー小説。1999年発表で2003年には映画化。主演は二宮和也でヒロインは松浦亜弥ってそうとう不評そうなんだが。観てないが。あと曽根は山本寛斎よりも古田新太でイメージした。
 確かに、これはすごい。エンターテイメントとしてのページを捲らせる力には敬服する。ネタバレになるので詳しくは書けないのが残念だが、少しデスノート夜神月を連想させるような頭のよさ(あるいは、論理構成の巧みさ)と他者を思いやるが故の犠牲精神を併せ持った主人公は魅力的だ。ちょっと語りや考え方がエロゲの主人公っぽかったが(エロゲやったことないけど)。
 トリックを思いついて、それを実行に移すまでの緊迫感は見事。一気に読んでしまった。
惜しむらくはナイフやインターネットの知識、化学式などを使った部分が多く、読み飛ばしてしまいそうになること、また、中島敦の「山月記」や夏目漱石の「こころ」をそのまま抜粋してしまっているのはいただけない。優れた作家は要約も優れていたほうがいいと思うだけに。
 ラストも、単純な論理で物語を放棄するのではなく最善の方策としての主人公の選択が心に深いものを残した。映画の宣伝文句*1は煽りすぎだと思うけれど、倒叙ミステリーとして歴史にひとつの標を打ち立てた作品として最重要であると思う。青春小説としても読めるし。
容疑者Xの献身」との共通点も感じた。それは、両者とも他者への優しさをもった殺人犯であるということ、あと殺された男の姿が共通する。
80/100

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

*1:「こんなにも切ない殺人者がかつていただろうか」