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OKINAWA MOVIE LIFE

沖縄(宮古島)在住の映画好き。ツイッターは@otsurourevue

それでも夜は明ける(スティーヴ・マックイーン) ★★★★

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 連想した映画がなぜか『千と千尋の神隠し』と『TIME』だった。
 スティーブ・マックイーン監督の映画を観るのは2作目。『SHAME』ではまだ文体を掴みきれていなかったが、今回はその文体により映画自体にも乗れた。長回しの多用により、作品自体の問題意識を観客に突きつける、一種S的な文体と言おうか。日本人にとっては、黒人奴隷制度の実態についてあまり馴染みがないわけで、その事もあってか最初は、2ヶ所ほど身体的な痛みを感じさせるシーンを除いて、強烈な束縛が出てくるわけではない。ただ、そうやって油断していると後半足元を掠め取られる。序盤そこまでエンターテイメントとして誇張した描写が出ない故に、どうしても観客はこれを他人事として安心して観るわけにはいかなくなってくる。例えば、仕事において自分の倫理と違っている時の決断とか、そういった問題を突きつけてくるわけです。
 二年ほど前に『TIME』という映画があって、ぶっちゃけ評判よくないんだけどあの映画で印象に残ったのが、時間を独占する大富豪たちが時間を貧民に開放するよう脅迫を受けても、結局開放しない場面。システムの中に組み込まれた「悪」を疑うことの難しさを捉えたシーン。 奴隷解放が達成された現在、なぜマイケル・ファスベンダー逹かあれほどまで奴隷に固執するのか、にわかには理解しがたい。その部分にぼくはシステムそのものを疑うことの難しさを見てとり、それは現在においても存在するのかもと疑う必要性を感じとった。
 演出としては長回しシーンの緊張感が凄まじく、特に後半、例の鞭打ちシーンでファスベンダーの奥さんの声が画面外から響くところなどやばかった。あとは、全体的に酷薄な状況ほど自然描写が情緒的になっているように感じた。